Opinion | Our Brains Are No Match for Our Technology - Tristan Harris, 2019-12-05 ( https://nyti.ms/2OThGyc )
おおざっぱな和訳 まだとちゅう
「これから起こる危機を、人類は解決できるだろうか?」
問われて、エドワード・ウィルソンはこう答えた。
「ヒトは、感情は旧石器時代のまま、制度はヨーロッパ中世のままで、神のごときテクノロジーを手にしている。問題はここにあります。」
それから10年、テクノロジーはさらに劇的に進歩した。ヒトの脳は変わっていない。
FacebookやGoogleがプライバシーを侵害しているとか、企業として大きすぎるとか、そういう懸念をよく耳にするようになった。これらは問題の本質だろうか。
かりに、プライバシーの問題をすっかり解決できたとする。データはすべてユーザーのもの、トラッキングは禁止。このユートピアで、企業の手に渡るのは、ユーザーがみずから明かした情報だけだ。
おそらく、ウェブ広告があまりにも的確で怖くなったり、監視されているかもと不安になったり、そういうことは少なくなるだろうが、インターネットをとりまく闇は、依然として深いままだ。
「いいね!」欲しさとSNS中毒で、集中力は壊滅的に続かない。過激なツイートにばかり反応してしまって、建設的な世論の形成ができない。インターネットいじめはなくならず、子どもの精神を蝕みつづける。
自動生成された「あなたへのおすすめ」をたどれば原理主義や陰謀論に行きあたる。ためになるコンテンツを人の手で選び取るのはお金がかかるので、アルゴリズムによる最適化はなくならない。自己完結した狭いコミュニティのなかで過激なコンテンツが拡散されては、銃乱射事件を引き起こす。
こんにちのソーシャルメディアは、20億人の脳みそを影響下に置いて、世界の歴史を左右する力を持っている。選挙の結果も、情報の真偽も、ソーシャルメディアが決める。社会の分断はすすむばかりだ。
プライバシーの問題は軽んじていいものではない。しかし、プライバシーの侵害を厳しく取り締まる法律があったとしても、石器時代のままの感情は、かんたんに誘惑されてしまう。
FaceApp が流行ったとき、1億5千万人のユーザーが、みずからすすんで顔写真と実名を差し出した。なぜか?顔写真を送ると数十年後にどんな顔になるかを予測してくれるから。この大量の顔写真と名前は、ロシアのサンクトペテルブルクにある開発会社が所有するデータとなった。
ひとは面白いアプリを与えればみずから顔を撮って送ってくれる。となると、選挙システムをハッキングとか、有権者の個人情報を盗むとか、そんなことをする必要があるだろうか。
石器時代のままの脳は、テクノロジーの誘惑に勝てやしない。プライバシーは有名無実化するし、それだけではない。市民が共同して行動を起こすことも困難になる。
ヒトの脳は、社会にある苦しみをあまねくすべて受け止められるほど大きくない。それなのにウェブニュースは、世界中のあらゆる苦痛や残忍を一所に集めてみせ、ある種の学習的無気力をもたらす。情報を与えておいて、それに対して行動を起こすための道具を与えない、そんなテクノロジーは人道に反する。
ヒトの脳は、真実を追いもとめるようにできていない。考えと一致する情報をみればいい気持ちがするし、対立する情報をみればいやな気持ちになる。ユーザーがこれまでにアクセスしたものと似通った情報を与える、そんなアルゴリズムを用いる巨大IT企業は、人と人との対話を不可能にする。かつて原子を分割してみせたテクノロジーは、こんどは社会を分割し、各個が自己完結した思想の宇宙をいくつも創りだした。
簡潔にいうと、いま、私たちの脳はテクノロジーに圧倒されて、喫緊の課題に立ち向かうことができなくなっている。このパワーバランスの崩壊を悪用した、広告収入を軸にすえたビジネスモデルが蔓延り、ひとの注目をうばいあう競争がつづいている。無料のサービスを使うことで私たちは、みずからをダウングレードしている。
これはほんとうに危険なことだ。むやみに注目を引くものだらけの環境に20億人が閉じ込められて、私たちの文明は生き残っていけるのだろうか。
ヒトという生き物は自らを省みることができる。脳とテクノロジーとのパワーバランスが崩壊している、このことを自覚できるとすれば、私たち人類くらいのものだ。それなら、このパワーバランスを修正することも、可能だ。
徹底した自己観察にもとづいて、まったく新しい、人道にのっとったテクノロジーを創る。この難題と向き合えるかが分かれ目になる。汝自身を知れ、とは古代の格言だ。ヒトの能力の限界をきちんと見極めて、そこに合わせてテクノロジーを修正しなくてはいけない。
ずいぶん抽象的になったが、なにをすればよいのか。
まず、政府は、ユーザーの注目をむやみに惹きつけるビジネスモデルがまったく割に合わないように、巨大IT企業に「ダウングレード税」を課し、この税収を報道、公教育、そして新しい人道的なプラットフォームの創生に充てること。
次に、私たちは、無料のソーシャルメディア
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